2022年(令和4年)年頭所感
「ポストコロナ、鋳造業もSDGs」
一般社団法人 日本鋳造協会
会長 藤原 愼二
明けましておめでとうございます。
会員並びに関係各位の皆様方には 2022 年の新春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。また、協会の運営に当たり、皆様方には格別なご理解とご協力を戴いておりますことに御礼を申し上げます。
昨年の概況
世界が激変、コロナ・DX・SDGs・カーボンフリー・米中対立と、世界が一変。一昨年初に発生した新型コロナウイルスが昨年は感染再拡大、2 度の緊急事態宣言発出。世界では東南アジアなどでロックダウン事態も発生。
日本では幸いにも年末には感染激減も、韓国や欧州では感染再び急拡大。政治面では突然の菅首相辞任表明と衆議院総選挙で与党が過半数確保し岸田新内閣が誕生。
米中対立が激化し米国は北京五輪の外交的ボイコットを宣言し、欧州は中国を最恵国待遇から除外。 ※カーボンフリー対応で、協会内にカーボンニュートラル推進特別委員会を設置し活動開始。
我が国の生産状況
一昨年初、コロナ発生で急減するも次第に回復を始めた製造業は、昨年夏以降に東南アジア諸国のコロナ感染再拡大により半導体や各種部品の供給不安定が発生。この影響で、回復傾向だった鋳造業の生産は8 月以降失速し、年末には対前年同月比ではマイナスに。自動車はこの影響が顕著で、生産遅れがプレス屑発生減少につながり鉄スクラップ調達に困る事態発生。
コロナで需要急増した半導体や輸出用農業機械の活況など、好不況がまだら状況。仕事が復活した分野では、働き方改革の残業規制上限で納期対応できない会員も出てきて、厚生労働省に中小企業への規制適用の配慮要請を行いました。
世界で資材インフレが急激に進行
世界各国のコロナ対策の巨額財政支援でインフレが進行。これに加え地球環境のカーボンフリー対応で、日本では高炉大手がCO2 減少になるスクラップ使用比率を大幅増加させ、自動車の生産減少もあり、鋳造の主原料の良質鉄スクラップ需給バランスが崩れ一昨年比では4倍にまで価格が急騰。
石炭忌避による火力発電減少で、中国では大規模停電や電力供給制限が始まりフェロシリコンなどの価格も急騰。 8 月には顧客へ鋳物製品価格反映への配慮を求める会長名文書を発行し、秋には直近の価格上昇のデータを追加し、会員の価格交渉を支援しました。
取引改善
昨年末、岸田首相自ら取引改善と大企業から中小企業への価値の転嫁に正面から取り組むことを表明、政府の姿勢が明確になりました。
一昨年は経済産業省より「型取引適正化推進協議会報告書」が、昨年は中小企業庁長官及び公正取引委員会事務総長より「下請代金の支払手段について」(「手形廃止通達」)が発出され、また素形材産業や自動車産業などの取引ガイドラインも改訂されました。
この取引ガイドラインの実施状況に関するフォローアップ調査の結果では、一部に改善みられるものの、今後も普及努力が必要な状況。鉄源材料などの価格変動は製品価格に反映が浸透してきましたが、最低賃金Up や働き方改革により実質賃金が上昇しているにもかかわらず、労務費上昇の製品価格反映は進展がなく努力必要。
支払い改善では可能な限り現金払いとする(やむなく手形払いとする場合でもサイトは60 日以内)旨の手形通達が発出されましたが、調査では自動車など一部大手では現金化が実施されたものの、下請け側への普及は未だにほとんど進んでおりません。型取引の改善では、保管費を認めていただける事例が出始めたが、普及はこれから。
コロナと当協会と諸行事
鋳造協会の諸行事も、コロナにより会合中止となったり、Web 利用となりました。昨年の賀詞交歓会は中止となり、理事会・協会役員会・総会も書面決議やWeb 会合となりました。協会本部では緊急事態対応などで在宅勤務制を導入し、鋳造入門教育や鋳造カレッジなど各種の教育も中止やWeb 開催となりました。
上海で開催のメタルチャイナ2021 や、瀋陽で開催された第2 回アジア鋳造協会もWeb 開催となり当協会もWeb で参加、精密鋳造の世界会議やYPP(日独米の鋳造会議)は延期され、スイスで行われていたISO の委員会会合も、Web 会合となりました。
当協会の行事もデジタル化が大きく進展し、会員の皆様も次第に慣れてきて、業務効率化や生産性改善に役立っているとの声も出るようになりました。
協会の秋の講演大会はWeb で行いましたが、230名の視聴者があり、従来の倍以上の参加が得られ内容も充実との評価をいただいたところで、講演会ならWeb の方が参加しやすく聞きやすいという声もありました。
次々に押し寄せる難題や変化に対し、日本鋳造協会は微力ではありますが、会員の皆様とともに正面から取り組んで参りますので、今後とも、関係各位のご支援ご協力をよろしくお願いいたします。 皆様にとって2022 年が幸多き年になりますようお祈りいたします。
<アサゴエ工業㈱ 会長、岡山県鋳造工業協同組合 理事長>