2024年(令和6年)年頭所感

2024年 年頭所感 藤原会長

一般社団法人 日本鋳造協会
会長 藤原 愼二

明けましておめでとうございます。

会員並びに関係各位の皆様方には 2024年の新春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。また、協会の運営に当たり、皆様方には格別なご理解とご協力を戴いておりますことに御礼を申し上げます。

 

昨年の概況

世界では、2022年2月発生のロシアのウクライナ侵略が膠着状態となり、エネルギー価格高騰は一服となるも、2023年10月ハマスのイスラエルへの大規模テロに対抗し、イスラエルがガザ地区に大規模軍事行動で中東が不安定化、東アジアでは米中対立が激化し、最先端半導体の中国への輸出不可やパンダ全頭返還など関係の冷却化が進みました。米中首脳会談は対立の厳しさを浮き出たせることにもなりました。

福島の処理水放出を巡り中国が理不尽な非難や水産品輸入停止、さらに中国ではスパイ防止法が制定され、日本人が理由不明で逮捕される事件も発生するなど関係冷却が懸念されます。中国の深刻な不動産不況によると見られる深刻な経済停滞は、日本にも悪影響を与え始めています。欧米のインフレ対策での高金利政策は、住宅建築の停滞などで世界の景況にも影を落とし始めました。

日本では、コロナは5類となり諸活動の本格再開が始まり、海外からの訪日客も以前並みとなり、生産も回復基調となりましたが、年後半からは世界の景況悪化の影響を受け始めました。さらに、少子高齢化・人口減少は急激に進行し、労働力確保がますます困難になっています。特に、コロナ後をにらんだ大企業の採用活発化や、学生のWeb慣れもあってか、地方中小企業の新卒採用はほとんどできなかったとの話も多く聞かれています。

貴重な人材源だった外国人技能実習生制度は廃止され、新たな制度に移行することとなり、従来3年間は実習生として受入れ企業に留まっていたものが、経過措置期間はあるものの1年経過後には転職可能ということで、人材確保の先行きの見通しは困難度を増しています。

働き方改革の残業規制と人材不足は、長距離輸送での運転手の労働時間管理から輸送業界にも大きな影を落としており、物流2024年問題として対応が迫られています。

鋳造の需要の6割を占めるともいわれる自動車産業では、脱炭素に向けたEV化の動きが欧州や中国を中心に急激に進行中で、日本の自動車メーカーの技術開発は脱内燃機関が顕著となり、エンジン関連部品や駆動系の部品の将来に懸念が発生しています。

 

我が国の生産状況

コロナは収まったものの、鋳造産業の受注状況は前年に引き続き低迷が継続。2023年後半には、欧米や中国の景気低迷が始まりその影響を受けて、受注減少傾向が報告されており、予断を許さない状況です。一部では雇用調整助成金を申請する企業も出始めているといいます。

 

取引改善

原材料やエネルギーコストの価格転嫁は、大手相手では比較的認められるようになってきましたが、3次4次相手ではなかなか受け入れてもらえず、さらに賃上げは生産性改善で賄えという大手需要家の従来型経営哲学を崩せず、インフレ対応の賃上げは難航しています。政府主導の賃上げ推奨との協力と実現が今後の課題です。

 

コロナと当協会諸行事

脱コロナで、協会行事はほとんどが対面開催再開され、その良さを多くの会員が実感できるようになりました。一方で、Webの利用も定着し使い分けや併用ができるようになり、DXは着実に前進していますが、製造現場IoT導入は未だ着手の動きが出始めたところです。

昨年の主な協会行事として、春季大会・総会、鋳物議連総会への参加、GIFAツアー、北海道で開催した若手経営者夏季全国大会、京都で開催した秋季大会が、いずれも盛会のうちに実施できました。

IoT推進特別委員会は、今年度が最終年となり年度末にIoTセミナーを開催予定。

カーボンニュートラル特別委員会は、エネルギー使用量実態調査や、モデル工場での実証調査などを実施。

人材育成事業では、鋳造入門講座、鋳造カレッジを多くの受講者を迎えて開講し、各種の技術研修会やセミナーも開催できました。

取引適正化では自主行動計画改定とフォローアップ、自動車部品工業会と素形材7団体との懇談会などを、物流適正化では物流2024年問題に対応する自主行動計画の策定を行いました。

外国人材問題では、特定技能外国人制度における特定技能2号の対象業種に鋳造が追加されました。

標準化では、JIS・ISOの会合へWebで参加できました。

国際会議では、アジア鋳造協会(AFA)へWeb参加、3月には日独米の若手経営者・技術者の集まりであるYoung Professional Program(YPP)日本大会を岡山・広島地区で開催することとしています。また、来年9月の第16回世界精密鋳造会議(WCIC)神戸大会の開催に向けて準備中です。

 

結言

次々に押し寄せる難題や変化に対し、日本鋳造協会は微力ではありますが、会員の皆様とともに正面から取り組んで参りますので、今後とも、関係各位のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

皆様にとって2024年が幸多き年になりますようお祈りいたします。

 

アサゴエ工業(株)代表取締役会長
岡山県鋳造工業協同組合 理事長