2025年 年頭所感 藤原会長

一般社団法人 日本鋳造協会
会長 藤原 愼二

明けましておめでとうございます。

会員並びに関係各位の皆様方には 2025年の新春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。また、協会の運営に当たり、皆様方には格別なご理解とご協力を戴いておりますことに御礼を申し上げます。

 

昨年の概況

世界では、20222月発生のロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の派兵参戦、ハマスの大規模テロから始まったイスラエルのガザ地区侵攻など2つの戦争事態が継続、欧州では難民移民激増で発生した社会不安から保守主義政党が躍進、東アジアでは米中対立が激化し最先端技術製品の中国への輸出不可やパンダ全頭返還など関係の冷却化、さらに中国ではスパイ防止法が制定され、反日教育の影響か登校小学生刺殺事件など不穏な情勢も発生し、多くの企業が中国渡航を差し控える事態となりました。

中国の深刻な不動産不況によると見られる深刻な経済停滞と工業製品の価格低下やダンピング輸出は、日本にも悪影響を与え始めています。欧米のインフレ対策での高金利政策は、住宅建築の停滞などで世界の景況にも影を落とし始めました。

11月に行われた米国大統領選挙では、トランプ大統領が圧勝で再選され世界の政治的激変が予想されます。

日本では、自民党の政治資金問題が再燃し岸田総裁の退陣と石破総裁の誕生があり、10月に行われた衆議院総選挙では与党が大敗し過半数を割込み、国民民主党が4倍の議席を獲得しました。衆議院の重要委員会の委員長が野党に移り、今後の国会運営は野党主導が増えて、近年にない困難が予想される事態となりました。

少子高齢化で労働人口減少と残業規制強化や有給休暇の取得促進、育児休暇の男女への普及に加え、外国人研修生制度から転職が可能な育成就労制度への移行、新卒の採用難や給与水準差での転職増加など、中小企業の労働力調達事情はいっそう厳しさを増しています。

コロナで世界各国が行った財政資金供給で緩んだ金融のため世界で進行するインフレは、円安により我が国の諸物価高騰を招き生活を守る賃上げは5%レベルとなり、製品価格反映が国・労働団体・経済団体の共通テーマとなりました。

一方、経済苦境で価格低下の中国など海外との競争のため、一部分野では価格反映どころか引き下げ要求もあるなど難しい状況も発生しています。まさに日本のものづくりの継続ができるかどうかが問われ始めています。

鋳造需要の約6割を占める自動車産業では、脱炭素に向けたEV化の動きが厳冬期の電池能力低下問題表面化などから欧米では見直しの動きがあるものの、なお中国を中心に低価格化と普及進行中で、日本の自動車メーカーの技術開発も脱内燃機関が続き、エンジン関連部品や駆動系の部品の将来に懸念が発生しています。

 

我が国の生産状況

2024年は10月までの生産量は銑鉄鋳物では、世界景況悪化を反映し対前年比マイナス7%程度と減産基調で、今後も減産基調で推移すると見込まれ、企業経営を圧迫しています。従業員減少と募集不調により生産能力の減少が進行し、今後生産増の場合の対応に不安の懸念があるとの指摘も出ています。

 

取引改善

インフレ対応や人材調達難による賃上げは進行しているものの、製品価格への反映は大企業と1次下請け中心に進んではいますが、2次以降の下請けではまだまだ不十分な状況です。型取引では保管費の支払い問題はなお道半ばです。今年11月からサイトが60日を超える手形の発行禁止で多くの企業が60日以内へ転換表明していますが、支払いの現金化比率はなかなか上がりません。

さらに、一部産業では海外競争理由の値下げ要求もあり前途多難な状況です。政府においては下請法の改正に取り組んでいますので、今後の法制化の動きを注視が必要です。

 

当協会諸行事

昨年の主な協会行事として、春季大会・総会、鋳物議連総会への参加、浜松開催の若手経営者夏季全国大会、九州開催の秋季大会、人材育成は入門・鋳造カレッジ・カレッジ上級コースや、各部会の委員会・専門委員会活動など、いずれも盛会で実施できました。

中国やタイで開催されたアジア鋳造業界行事、ISO規格審議会、日米独有志のYPPの日本開催、ドイツ鋳造協会の日本訪問受け入れ、精密鋳造関係など国際活動も活発に行われました。カーボンニュートラル特別委員会ではモデル工場事業等を実施、IoT特別委員会は経営部会のDX推進委員会に移行して活動を継続しています。

 

結言

次々に押し寄せる想定を超える政治・経済・社会の激変や難題に対し、日本鋳造協会は微力ではありますが、会員の皆様とともに正面から取り組んで参りますので、今後とも、関係各位のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

皆様にとって2025年が幸多き年になりますようお祈りいたします。